[コラム


週刊連載 Mobile Little Things [2000/6/23]

第二回:Palmの現状

彩音五郎(kouha@chaos.to)

■ Palmをとりまく環境

 PalmはPalm Computing社の販売するPDAだ。IBM,ハンドスプリング,TRGから互換機も販売されており,世界で一番のシェアを誇っている。1996年3月にU.S. Robotics社から発売された。

 Palm Computing社が開発したのだが,資金不足により販売が困難な状態だったのを,U.S. Robotics社がPalm Computing社ごと買い取りPalmの販売をした。その後,U.S. Robotics社が3comの傘下になるなどの複雑な状況をへて,現在はPalm Computing社が販売している。

■ Palmのラインナップ

 Palmは日本においては,パーム コンピューティングとIBMとハンドスプリングから販売されている。また,Visorの日本語版が発売されたのは記憶に新しい。ソニーもなにやら互換機の計画をしているらしい。

 現状の日本語版のラインアップは以下のようになる。

・パームコンピューティング
Palm IIIc / Palm Vx

・日本アイ・ビー・エム
WorkPad 30J / WorkPad 40J / WorkPad 50J

・ハンドスプリング
Visor Deluxe

 日本IBMがまずWorkPadとして1999年日本で販売を開始し,今年になってからパームコンピューティングとハンドスプリングが相次いで参入したと言う形だ。

■ Palmの特徴

 Palmの特徴は,シンプルであるが奥の深いところだろう。また,IBMがPCコンパニオンと称しているとおり,PCとの連携によって実力を発揮する。

 Palmの基本機能は,スケジュール,住所録,ToDo,メモくらいなものだ。これらの基本機能は,非常に単純であり機能的にもそれほど使い勝手はよくない。スケジュールとToDoの連携はできないし,メモには日付すらはいらない。

 普通,ここまで単機能の内蔵ソフトだと使いにくくて不満が出て,バージョンアップごとに機能を色々と追加していきそうなものだが,Palmの場合,そうはならなかった。これらの基本機能は,ハードウェアボタンと関連づけているため,わかりやすく,また目的の機能に素早く到達することができる。そのため,機能の単純さが使いやすさに繋がっているのだ。

 160×160ドットと言う画面の狭さが欠点としてあげられることもあるが,動作が高速で,スクロールに専用のボタンが割り当てられているため,画面の狭さで不自由することはあまりない(電子メールの改行が変なところで切れるとか,ホームページがそのままでは満足に見ることができないなどはあるのだが)。

 パソコンとの連携が標準で可能なことも大きな特徴であろう。ワンボタンでシンクロできるHotSyncは各種のPDAに影響を与えたのかもしれない。

 そしてなにより,追加のソフトウェアが豊富なことであろう。フリーのものから有料のものまで,他のPDAできることでPalmでできないことはないのではないかというくらいの数のソフトウェアがそろっている(ほとんどが英語版というのが大きな欠点ではある。だが,英語版のソフトウェアでも定番のものはユーザーにより日本語でも使えるような努力が行われている)。

 基本機能はシンプルで使いやすい,そのためユーザーの間口が広く,やろうと思えばできないことがないのではないと思えるくらい奥が深いため,マニアの要求にも応えられる。これが世界No.1のPDAたるゆえんであろう。

 ただし,基本機能以外のことをしようとするのはなかなか難しい,本を読んで勉強したり,インターネットで情報を集めたりしないと,使いこなすことは無理だろう。だいたい,パソコンとのHotSyncの設定をしてりするだけでもできない人はいるのだ。

 だが,勉強しうまく追加のソフト導入し,きっちりと設定すれば上記の機能が単純な所や,足りないところは解決できる。勉強のしがいのあるというものだ。

 設定とかにあまり苦労せずに,色々なことがしたいという人にはこのマシンはあまりむいていない。基本機能や,ゲームとか小遣い帳とかちょっとした機能だけを使う人か,多少の苦労をしても良いので,色々な機能を使用してみたいという人が使うべきであろう。

■ パソコンとの連携

 特徴の所でも書いたが,パソコンとの連携はHotSyncによりワンボタンで行うことができる。これまでも,PDAとパソコンを連携できる仕組みはあったのだが,Palmは連携用のソフトウェアと接続用の機器(クレードル)を標準で備え,ワンボタンで簡単に連携できる仕組みを備えたというところが画期的だった。

 それまでのPDAは,本体を購入し,接続用のケーブルを購入し,連携用のソフトを購入し,面倒な設定をしなくてはいけなかった。そのため,接続してもバックアップとかの用途で,たまに使用されるくらいであった。PalmはそのようなPDAとパソコンとの関係を大きく変えたのだ。

 現在では多くのPDAがワンタッチでのシンクロや連携の機能を備え,また標準で接続用のケーブルや連携のソフトを添付していることを考えるとこれらの連携の機能はあって普通のものである。

 だが,標準添付される連携用のソフトであるPalm Desktopとのシンクロのスピードや精度,本体と連携させた時の使いやすさなどを考えると,まだまだ一日の長がある。

 Palmのパソコンとの連携は優れた物であるといえるだろう。

■ Palmで利用できるコンテンツ

 国内では専用に用意されたものはほとんど存在しない。PDAなどで読むことのできる定番の青空文庫などのほかは,ユーザーが用意した物があるだけであり,商用コンテンツと呼べるレベルの物はない。

 来年には国内でも色々とコンテンツ関係の充実が図られるという話もあるようだ。しかし,この激動の世の中において,来年にコンテンツが充実される予定だからといって,現在のマシンに関して評価するのは間違いだろう。

 パソコンで取り込んだインターネットのデーターやコンテンツをHotSyncで取り込んだりということは可能なので,夜間に自動巡回で取得したコンテンツを朝にHotSyncして取り込んで出かけるということなら可能であろう。設定はそれなりに難しいが,一度設定してしまえば後は簡単だ。

■ 日本語で扱うがゆえの問題点

 元々は英語圏で使用するように考えているマシンだけに,日本語で扱うがゆえの問題点というのはいくつかある。一番の問題点は入力が面倒なことであろう。

 Palmの文字入力はGraffitiという特殊な入力方法を使用する。アルファベットの一筆書きをアレンジしたものなので,それなりに覚えやすいものであるのだが,それでも覚えきれない人は多いようだ。そのため,日本語版のPalmにはキーボードボタンが標準でついており,ソフトウェアキーボードを簡単に使うことができるようになっている(英語版では電卓のボタンだった)。

 また,入力に慣れたとしてもアルファベットを一文字一文字入力していき,変換するという仕様なため,入力は遅い物となる。特殊な入力方法を使用している分,誤入力は少ないので使い心地は悪くはないのだが,日本語の手書き入力で一番優れているという評価の高いザウルスとかと比較すると,スピードは遅い。特に漢字などを入力しているときは特にそう思う。

 パソコンとのシンクロが優れているので,入力はパソコンを使用すると割り切るか,専用のキーボード(本体と比較するとかなりでかいものが多い。Palmが出しているものは,まだ日本語版はないが特異な折りたたみキーボードもある)を接続するとかしないとかなりデータの入力はつらいこととなるだろう。

 もっとも,Windows CEのパームサイズPCなどでも利用されている予測と曖昧検索にもとづく高速テキスト入力が可能なフリーウェアの日本語入力システム「POBox」でそれなりに高速な入力を行っている人たちもいるようだ。また,片手で入力できる小型のキーボードなども販売されている。

 文字関係では,英字などの半角の文字の大きさが,漢字の半分ではないところなども気になる人は気になるだろう。

■ 総括

 日本語の入力に関して問題は抱えている物の,その使い勝手と選択肢の多さで日本でもすでに確固たる地位を得ている。

 価格も,昔はそれなりの値段だったが,ハンドスプリングが日本上陸し29,800円という価格で販売を開始したことにより,各機種ずいぶんと購入しやすい価格になっている。また,カラーバリエーションも増えたので,ユーザーの裾野も広がりそうだ。

 これからも,日本だけでなく世界でますます発展していくPDAであることは間違いないだろう。

■ 参考url

・パームコンピューティング社
http://www.palm-japan.com/

・日本アイ・ビー・エム社
http://www.ibm.co.jp/pc/workpad/

・ハンドスプリング社
http://www.handspring.co.jp/

・著名なサイトへのリンク集
http://www.palm-japan.com/resources/links.html

・Palm用インラインPOBox
http://www.csl.sony.co.jp/person/masui/POBoxInline/

Palmの互換機の一つ,WorkPad 40J。WorkPad c3の方が通りがよい 下に並ぶハードウェアボタンがそれぞれ基本機能に割り当てられている。左から,スケジュール,住所録,上下スクロールボタン,ToDo,メモ

上部,左からコントラスト調整ボタン,赤外線ポート,電源スイッチ WorkPad 40Jと旧機種であるPalmPilot Professionalを並べてみたところ。PalmPilotにはストラップがついているが,これは筆者が勝手に取り付けた物で,標準ではない(注:改造は各自の責任において行ってください)

日本語版の画面 英語版の画面

WorkPad 40Jを専用のハードケースに入れた所。No.1のPDAだけあって,このようなケースなどは豊富に揃っている PalmPilot Professionalに専用のハードケースをかぶせた所

彩音五郎

 HP100LXに始まり,HP200LX,ザウルス,Palm,MobileGear,Psion,Windows CEを渡り歩き,現在は Psion S5mx をメインで使用している。

 PDAの他にもデジカメ,携帯電話,ミニノートPCなど小さな物に目がない。つねに多数の携帯電脳を持ち歩く,肉体派Mobiler。現在カバンに入れているアイテムは以下のとおり。

 Psion S5mx / Zaurus ICRUISE / MobileGear II R730 / Digital IXY Hyper Hyde / MicroDrive / NM502i / KX-PH933Sこれらの紹介についてはいずれ。

kouha@chaos.to
http://www.chaos.to/

今までに使用したマシンの遍歴についてはこちら。
http://www.chaos.to/ayane/past.html

 彩音五郎さんにモバイル全般について語っていただく新コラムの第二回目です。今回は世界でももっとも売れているPDAであるPalmデバイスについてです。


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